極少数ではあるが現在、日本のテーラー界において世界基準で認められ、活躍の場を世界にも展開している者がいる。
何年もその道で精進し、道を極め、日本人ならではの手仕事の技量で洋装の文化にチャレンジし続け、認められたからこそ。
テーラーで独り立ちするとゆう事はそんなに甘い世界では無いのは容易に分かる。
学生の頃から服飾を学び、リングジャケットで7年経験を積み、ナポリでアントニオ•パスカリエッロ氏に師事し、帰国後、総手縫の仕立て職人サルト・ドメニカとして活躍され、ストラスブルゴに専属テーラーとして招かれ確実にキャリアを積み、スタイルを確立されていった。17年より現在、独立され渡伊時代の師から頂いた名「サルトリア・ラファニエロ」として活動され、海外のトランクショーでも活躍、国内外の顧客も増やし続けられている、
"東徳行"(ひがしのりゆき)氏である。
一流サルトの服は流行に左右されることがない。
彼らの服作りは流行の対岸にある自分らしさ、すなわちスタイルを大切にすることにあると思う。私がその逆の流行を感じ行動する世界で敏感に生き続けていたので、余計に興味を持ったかもしれない。
ラファニエロが表現しているハウススタイルは、ナポリスタイルをベースに改良を加えていき、日本人の体にあった設計を目指している。比較的広めのラペルに低めのゴージラインを採用し、肩パットを使わずすっきりとした袖山で軽やかなリラックス感を演出する。服が前後に膨らむ設計になっている事により、ゆとりがありながらもソリッドかつシャープでエレガントに見える作りにもなっている。
「自分の仕事は、ナポリの景勝地の緩んだスーツを思い描きつつ、よりエレガントに仕立て日本の都会的な街並みに馴染むようにと」と語ってくれた事がある。その本質はナポリスタイルを着心地、見た目、雰囲気だけで日本人が好み、単に洋装かぶれになるのではなく、自分なりのスタイルを持つ人として、らしく纏って欲しいからではないかと想像した。
「スーツ」紳士服の正装であり洋服の基盤。そこから始まる装いの必要性を感じ、今回ビスポークテーラーのサルトリア•ラファニエロで既製服としてオリジナルのスーツをお願いさせて頂く事になった。もちろん東さんからしても初の試みである。
要望は、”ラファニエロ”のスタイルでよりオールドクラッシック感が漂うもの。スタイル的にはジャストだとガチになりすぎるし、肩パッドが無い柔らかなナポリベースのスタイルをより軽やかに纏いたいので少し大きめの作り、また幅広いサイズの要望もこちらをベースにこれからMTMも可能です。
Sartoria Raffaniello
2p Q classic double suit
Fox Brothers &Co Ltd 100% Super fine merino wool
Size 44,46,48
col, light grey
シングル、ダブル共、生地はロロピアーナの340g ウィンタータスマニアン150's 上品な光沢感がシルエットを際立たせ、滑らかなウールの質感と共に格式高いものに誂えられている。もう1着のダブルはFOXのフランネル生地。やわらかさの中に芯があり、長年着込むと味が出る。伝統と良い意味での重さのある生地感。もちろん既製ではあるがあえてこの辺りの生地選びはビスポークで選ばれる基準の生地を意識させてもらった。
スタイルは、普段のラファニエロよりさらに太めのラペルに低めのゴージラインでお願いしたのですが、少しクラッシック過ぎるとも取れるが、それを少しサイズオーバーで提案することで窮屈感が取れ、落ち着いた雰囲気に仕上がっている。理想とするクラッシックベースでの少しファッションと言いましょうか。ナポリスタイルの軽やかさと少しファッションが同居する感じ、目指すところの表現は少しは出せたかと。ただ最初はラペルの大きさに面食らった。サンプルもあげ調整もしたのですが、、ただある意味ここまで大きなのは中々ないと思う。それも個性とし良い生地を敢えてくしゃっと荒く着ていくとそれっぽさも出るんじゃないでしょうか。
最後の施し(お願い)で、ビスポークテーラーならではのハンドの温もりは欲しい所。今回は既製ですが、そうゆうのも少しは嫌味なく入れて欲しく、フラワーホールは東さん自ら手縫いで付けて頂きました。(神がかり的に忙しい時だったみたくヒーヒー言われてました。ごめんなさい)
このプリっとした口が病みつきになりそう。
Q retailor,